京大呼吸器外科 京都大学医学部附属病院呼吸器外科

肺移植について

肺移植

肺移植について

“呼吸がしんどい”ということは、健康な人にはわからない、大変な苦しみです。重症な肺疾患では、お薬などの内科的治療を行っても病状が進行し、余命が限られてしまうことがあります。そのような重症な患者さんの命を救うことができるのが、肺移植です。傷んだ肺を取り除いて、そこにいい肺を移植することで、呼吸が楽になり、健康な人と同じような生活を取り戻すことができる可能性があります。
トロント大学のCooper先生らによって肺移植が初めて成功したのは、1983年のことです。その後、肺移植は世界で広く行われるようになり、毎年数千例が実施されています。日本でも、1998年に前京都大学呼吸器外科教授の伊達らによって岡山大学で初の生体肺移植が行われ、今では年間100例以上の肺移植が行われています(2026年現在)。

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肺移植が必要な患者さんは?

内科的治療を行っても病状が進み、余命が限られていると思われる重症患者さんが肺移植を必要とする患者さんです。ほとんどの場合、生活を送るのに酸素吸入が必要な状態です。以下のような病気が肺移植の対象となる疾患で、疾患ごとに肺移植を検討する時期が異なります(日本呼吸器学会のホームページに詳しい記載があります)。

【主な対象疾患】
  • 間質性肺疾患(特発性間質性肺炎、膠原病などに合併する間質性肺炎)
  • 肺高血圧症、アイゼンメンジャー症候群
  • 気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎、嚢胞性線維症
  • COPD、肺気腫
  • リンパ脈管筋腫症(LAM)
  • 肺サルコイドーシス、じん肺、多発性肺動静脈瘻、肺好酸球性肉芽腫症
  • 造血幹細胞移植後などの肺傷害
  • その他の進行性肺疾患

また、肺移植手術は大変大きな手術で、手術を乗り切るだけの体力が残っていなくてはならないため、肺移植の適応には、多くの細かい取り決めがあります。

【代表的な要件】
  • 脳死片肺移植60歳未満、脳死両肺移植55歳未満、生体肺移植65歳未満であること
  • 癌などの悪性腫瘍がない、あるいは治癒していると判断できること
  • 肺以外の臓器に異常がないこと
  • 治療を必要とする感染症がないこと
  • 精神的に安定しており、治療への協力が十分に得られること

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脳死肺移植と生体肺移植

肺移植を行うためには肺を提供してくれる人(ドナー)が必要で、ドナーのタイプによって脳死肺移植と、生体肺移植があります。
脳死肺移植では、脳死に至った方の善意によって提供された肺を移植し、基本的に片肺もしくは両肺の全部を移植します。脳死肺移植を受けるためには、まず、必要な検査、手続きを経て日本臓器移植ネットワークに待機登録します。検査を終えてから登録までに2〜3か月かかり、その後自分の順番がくるまで待機しますが、日本では、待機期間の長い患者さんに臓器の優先権があり、登録後の待機期間は2年以上に及ぶことが少なくありません。呼吸が苦しい患者さんにとって、いつ出現するかわからない脳死ドナーを待つのは大変つらいことですが、希望をもって待っていただきたいと思います。
脳死ドナーの数が少ないことから始まったのが生体肺移植です。通常二人の健康なご家族がそれぞれの肺の一部(下葉)を提供して、患者さんの両肺として移植します。患者さんが小児などの小柄な場合に、お一人の提供者からの片側生体肺移植を行えることがまれにあります。健康な人にメスの入る手術ですので、脳死ドナーの出現まで待機できないと思われる重症な患者さんのみが生体肺移植の適応となります。また、生体ドナーは、肺を提供することによって、15〜20%の肺活量の低下が起こりますし、手術にはリスクも伴います。したがって、提供の意思が、誰にも強要されることなく、愛情に基づくものであることが大前提です。京都大学では、生体ドナーの条件として厳格な規定を設けています。そのうち特に重要な点のみを列挙します。

【代表的な生体ドナーの条件】
  • 年齢が20歳以上65歳以下
  • 血液型が適合(たとえば患者さんがA型であれば、生体ドナーはA型ないしO型)
  • 配偶者または3親等以内の血族

海外では脳死肺移植がほとんどです。日本では脳死ドナーの数が少ないため、生体肺移植も行われていますが、近年は脳死肺移植の増加に伴い、生体肺移植の割合は低下しています。

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紹介から肺移植までのながれ

1
かかりつけ医からの相談・紹介
2
肺移植外来受診
( 重症度に応じて生体肺移植の検討 )
※以下は脳死肺移植に向けたながれ
3
2週間程度入院し、肺移植適応評価・検査
4
近畿および全国の審査会・検討会での審査
5
日本臓器移植ネットワークへ登録
6
待機
7
脳死肺移植

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肺移植手術とその後

肺移植手術は大変大きな手術です。全身麻酔をかけて、片肺移植で6〜8時間、両肺移植では8〜10時間ぐらいかかります。呼吸器外科、心臓血管外科、麻酔科、手術部などがチームを組んで手術を行います。
そして、肺移植手術が終わるとICU(集中治療室)で術後の管理を行います。たくさんの医療機器、薬剤、医療スタッフ等によって集中的に治療を行いますが、患者さんは覚えていないことが多いようです(鎮痛剤などお薬の影響です)。しばらく人工呼吸器が必要ですが、数日〜2週間ぐらいで、自分の力で呼吸できるようになります。
2〜3週間で一般病棟に移って、リハビリテーションを行います。このころには、多くの場合、酸素がほとんど必要なくなります。退院してからの生活に備え、さまざまなことを勉強してもらいます。移植は受けたら終わりではなく、移植後も様々な自己管理が必要です。約2か月で退院となり、多くの場合は地元に帰っていただけますが、頻回の通院が必要となる場合などは一時的に京大病院の近くに住んでいただくこともあります。

地元に帰った後も、定期的に病院へ通院し(普段はかかりつけ医に通院していただき、半年、1年などの検診時に京大病院に受診していただきます)、免疫抑制剤や抗生物質等の5〜6種類程度のお薬が一生涯必要です。また、移植術後、半年までは食事制限もあります。拒絶反応の早期発見のために、毎日、自宅で簡易型呼吸機能検査をすることも必要です。しっかりと自己管理をしても拒絶反応や感染症を発症してしまう場合もあります。しかし順調であれば、移植前に必要だった酸素吸入や車椅子も必要なくなり、お仕事をしたり、家事をしたり、社会復帰をしていただけます。


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肺移植の費用

脳死肺移植、生体肺移植ともに保険適応になっており、手術および前後の検査、投薬は保険診療です。自己負担が一定の金額を超えた場合には、超えた額が払い戻される「高額療養費制度」などの対象となりますし、特定疾患で公費負担対象に指定されている方や身体障害者に認定されている方は、それらの制度を利用することもできます(自治体によって助成の内容や助成を受けられる等級が異なりますので、詳しくは各自治体へお問い合わせください)。
また、日本臓器移植ネットワークへの登録費用として3万円、更新料として年5千円がかかります(移植希望者が住民税非課税世帯であり、その公的証明がある場合には免除されます)。脳死肺移植の場合、臓器の搬送に関わる費用(列車、飛行機、チャーター機など)は療養費払い(費用の一部がのちに返還)となりますが、自治体や施設によって返還額が異なりますので、詳しくは各移植施設にお問い合わせください。かなりまれではありますが、チャーター機の使用の場合には、300万円以上かかることもあります。脳死肺移植を受けた場合は、日本臓器移植ネットワークのコーディネート費用として10万円がかかります(ただし、万が一、移植後満3カ月以内に移植した臓器が機能しなくなったと医師が証明した場合や、移植患者が住民税非課税世帯であり、その公的証明がある場合には免除されます)。その他、移植術後に行う簡易型呼吸機能検査の機器やパルスオキシメーター(酸素飽和度を測る機器)など、私費で購入していただく器具もあります。

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京都大学の肺移植

京都大学は、日本で最も早くから肺移植を行ってきた施設の一つで、2002年4月以降、これまで430例以上の肺移植を実施してきました(2026年現在)。呼吸器外科が中心となって複数の関係科、部署でチームを組み、肺移植医療を行っております。これまでに、自己肺を温存した肺移植、左右反転肺移植、ダウンサイジング肺移植、区域肺移植など、さまざまな新しい術式を開発したり取り入れたりしてきました。脳死ドナー肺を移植する前に体外で還流して評価するEVLP(ex vivo lung perfusion)や、脳死肺移植と生体肺移植を組み合わせるハイブリッド肺移植にも成功しました。

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肺移植の研究

肺移植は、未だ限られた施設でしか実施されていない特殊な医療です。肺移植の術後成績については、未だ完全に満足がいくものではなく、その改善を図る必要があります。そこで、京都大学呼吸器外科では、今後のより安全な肺移植医療を目指して、貴重な肺移植の機会を活かし、種々の研究をおこなっております。詳しくは臨床研究のページをご参照ください。なお、臨床研究においては、個人情報の保護に十分な注意を払い、データは個人を直接特定できない形で適切に管理しております。

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肺移植のご相談

患者さん、ご家族の方へ:肺移植についての詳しい説明や質問をご希望される方は、まず主治医の先生とご相談いただき、京都大学への紹介を受けてください。
医療機関の方へ:京都大学へは、年間100件以上の肺移植相談が寄せられています。適応について悩まれる場合でも、下記までお気軽にご連絡ください。

京都大学医学部附属病院 肺移植コーディネーター
Email: haiishok@kuhp.kyoto-u.ac.jp
Tel: 075-751-4775

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