京大呼吸器外科 京都大学医学部附属病院呼吸器外科

肺ガンとは

肺がんに対する外科治療

 京都大学呼吸器外科では肺がんの進行度、腫瘍の大きさ・場所、患者さんの全身状態、呼吸機能を総合的に評価し、一人ひとりに適した手術方法を選択しています。
 肺がん手術では、がんを確実に切除する「根治性」と、体への負担をできるだけ少なくする「低侵襲性」の両立が重要です。当科では、標準的な胸腔鏡手術からロボット支援手術、小さな肺腫瘍に対するマーキング併用手術、進行肺がんに対する拡大手術まで、幅広い術式に対応しています。

●京都大学呼吸器外科は、肺移植の手術技術を肺癌治療にも生かしています。
●拡大手術だけでなく縮小手術に関しても高度で先進的な技術を提供しています。
●この双方の高度な技術を両立し得る病院は日本国内において京都大学以外にほぼないと考えます。

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当科で行っている主な肺がん手術

1. 標準的な胸腔鏡下手術:3ポートVATS

 胸腔鏡下手術(VATS)は、胸に小さな創を数か所あけ、カメラで胸の中を観察しながら行う手術です。
 当科では、標準的な方法として3つの創を用いる3ポートVATSを行っています。肺葉切除、区域切除、部分切除など、病変の大きさや場所に応じて適切な切除範囲を選択します。
 胸腔鏡手術は、従来の大きく胸を開く手術に比べて創が小さく、術後の痛みや体への負担を軽減できることが期待されます。

2. 単孔式胸腔鏡下手術:Uniportal VATS

 京大呼吸器外科では、患者さんの身体への負担をさらに軽減するため、従来の複数個の傷で行う胸腔鏡手術(VATS)に加え、わずか1箇所の小さな切開(約4cm)のみで手術を完遂する「単孔式胸腔鏡手術(uniportal VATS)」を積極的に導入しています。

◆単孔式胸腔鏡手術の主なメリット

  • 優れた美容性: 傷口が1箇所のみのため、術後の傷跡がほとんど目立ちません。
  • 術後疼痛のさらなる軽減: 肋間(あばら骨の間)を刺激する箇所が1つに減るため、従来の胸腔鏡手術と比べても、術後の痛みが少ないとされています。
  • 早期の社会復帰: 身体へのダメージが少なく、よりスムーズな退院・社会復帰が期待できます。

 当科では、安全性と根治性を最優先に考慮した上で、進行度や解剖学的条件に合わせた最適なアプローチ(単孔式VATS、多孔式VATS、ロボット支援手術)を厳選し、一人ひとりの患者さんに提供しています。単孔式VATSをご希望の患者さんは、担当医にご相談ください。
 当科では、患者さんにとって安全性と根治性が保てる場合に、単孔式胸腔鏡手術を選択肢の一つとして検討しています。


3. ロボット支援下手術:RATS

 ロボット支援下手術では、術者がコンソールを操作し、ロボットアームを用いて手術を行います。
 高精細な3D画像と、手ぶれを補正する精密な操作により、肺の血管や気管支、リンパ節の周囲を丁寧に剥離することができます。特に肺門部やリンパ節郭清を要する手術において、安定した視野と繊細な操作が期待されます。
 患者さんの病状に応じて、胸腔鏡手術とロボット支援手術のどちらが適しているかを検討します。


4. RFIDなどのマーキングを用いた小型肺腫瘍手術

 近年、CT検査の普及により、すりガラス影を含む小さな肺腫瘍が見つかる機会が増えています。小型病変や肺の深い位置にある病変は、手術中に外から見たり触れたりしても位置が分かりにくいことがあります。
 当科では、必要に応じてRFIDマーカー(当教室で開発した非接触のICタグ)を病変の近くに留置し、手術中に専用の検出器で位置を確認しながら切除を行います。
 また、コンビームCT(CBCT)とハイブリッド手術室を活用することで、画像情報をもとに病変の位置を確認し、より正確な切除を目指します。小型肺腫瘍に対して、過不足のない切除を行うための重要な技術です。
 RFIDマーカーは肺を取る際に一緒に取りますので、体内に残る心配はありません。


 その他、ICGなどの色素を用いたVALMAP(こちらも当教室で開発した技術)を用いた縮小手術なども行なっており多くの縮小手術の実績があります。



5. 進行肺がんに対する拡大手術

 肺がんが胸壁、縦隔、大血管の近く、肺尖部などに及ぶ場合には、胸腔鏡手術だけでは十分な切除が難しいことがあります。
 そのような場合には、後側方開胸やTransmanubrial approach(胸骨上部を切る方法)などを用いて、病変に安全に到達し、根治切除を目指します。
 拡大手術では、呼吸器外科だけでなく、必要に応じて関連診療科と連携しながら治療方針を検討します。手術前には、画像検査、呼吸機能、全身状態、薬物療法や放射線治療との組み合わせを含めて慎重に判断します。


6. 自家肺移植手術

 肺がんの位置によっては、通常の肺切除では肺を大きく失う必要がある一方で、特殊な手術手技を用いることで肺機能を温存できる可能性があります。
 自家肺移植手術は、肺を一度体外に取り出して腫瘍を切除し、残せる肺を再び体内に戻す高度な手術です。適応は限られますが、通常であれば肺全摘が必要となるような症例に対して、肺機能の温存を目指す選択肢となる場合があります。
 高度な技術と慎重な適応判断を要する手術であり、患者さんごとに十分な検討を行ったうえで実施します。

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手術方法はどのように決まるか

 肺がんの手術方法は、単に「小さな傷でできるかどうか」だけで決まるものではありません。
 以下の点を総合的に評価します。

  • 肺がんの進行度
  • 腫瘍の大きさと場所
  • 肺門部やリンパ節への広がり
  • すりガラス影か充実性病変か
  • 呼吸機能
  • 年齢や併存疾患
  • 術前治療・術後治療の必要性
  • 安全に根治切除ができるか
 患者さんにとって最も重要なことは、体への負担を抑えながら、がんを適切に取り切ることです。
 当科では、低侵襲手術から拡大手術まで複数の選択肢を持ち、呼吸器内科・放射線診断科・放射線治療科と綿密に連携しながら、患者さんごとに最適な治療を提案します。

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患者さんへ

 肺がんの手術にはさまざまな方法がありますが、すべての患者さんに同じ術式が適しているわけではありません。
 京都大学呼吸器外科では、手術の安全性、根治性、術後の生活、呼吸機能の温存を重視し、患者さん一人ひとりに合わせた治療方針を検討しています。手術方法について不安や疑問がある場合は、外来で遠慮なくご相談ください。

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