
平成26年卒 伊達直希
私は2025年よりトロント大学のLatner thoracic research laboratoriesのDr. Shaf Keshavjee labでリサーチフェローをしており、ちょうどこちらに来て1年が経ちました。トロント大学病院は1983年に世界で初めて片肺移植を成功させ、現在でも年間200件の肺移植が行われている世界最大の肺移植施設です。研究施設も規模が大きく、肺移植だけで複数のprinciple investigatorが自身の研究グループを持ち、日夜様々な研究をおこなっています。私は主にブタの体外肺灌流(ex vivo lung perfusion: EVLP)を使用した実験をしつつ、臨床EVLPの手伝いもしています。実際にドナー肺がEVLPで評価され、移植まで回る過程を経験することができます。
こちらの研究室の特徴ですが、規模が大きい割にそこまで分業化されておらず、動物実験から基本的なアッセイまで自分で行うことが多いです。MDやPhDの学生が多いので教育的な意味合いもあるのかもしれません。もちろんTechnicianや特定の分野に特化しているフェローもいて、困ったことがあれば誰かに頼ることができます。私の所属するラボには他に日本人、ブラジル人、カナダ人のリサーチフェローがいますが、皆非常によく働き、親切で協力的です。特にブタの実験は皆の手伝いが必要なのですが、嫌な顔せず手伝ってくれます。週1回のラボミーティングがあり、Dr. Keshavjeeの前で研究の進捗を報告します。なんとも言えない緊張感がありますが、私の拙い英語でもしっかり聞いてくれますし、基本的にフェローの意見を尊重した建設的な意見をもらえます(時には“No”と言われることもあります)。また、Dr. Keshavjeeは施設の統括責任者でもあるため、他のラボからの報告や相談の場になっており、とても勉強になります。ディスカッションの内容は臨床への応用を常に念頭に置いている印象です。これまでEVLPや臓器保存液など多くのものがこのラボで開発され、実臨床で利用されていますので、translational researchのなんたるかを見ているようです。
留学の醍醐味の一つは異国での生活を楽しむことだと思います。トロントは移民の街で、世界中の人々が集まっていますが治安はよく、危ない目にあった話はほとんど聞きません。私は家族連れで渡航しているため、安心して子どもと外を出歩けるのはとても助かります。また英語が話せない生徒へのサポートや大人を対象とした無料の英会話教室もあり、移民を受け入れるシステムが構築されていると感じました。街の中心部は広大なオンタリオ湖に面しており、少し歩けばビーチから景色を楽しむことも出来ます。他にも圧倒的な迫力のナイアガラの滝、オタワの8kmにも及ぶ運河アイススケート、春だけ稼働するメイプルシロップ工場、日本のコンビニぐらいあるTim Hortonsというコーヒーショップ、袋入りで売っている牛乳、すぐに止まる地下鉄、そこら中にいるリス、短い夏、長く寒い冬、etc…。日本との違いを満喫しつつ、トロントでの生活は続きます。

ラボメンバーとの写真です。